渓流釣り、渓流キャンプ、鉄砲水の予兆と安全対策

渓流釣りは、よく早朝と夕方が釣れる時間帯だといわれますよね。
それに雨上がりも良いチャンスだと。
でも、最近のように豪雨や長時間の雨による極端な増水や濁流ではそれどころではなく、大変危険です。
ここでは、鉄砲水と土石流のメカニズムについてご紹介します。

やまひつじ
安全で楽しい渓流釣りや渓流キャンプの参考にしてくださいね。

なぜ、雨上がりは渓流釣りのチャンスなの?

雨で水量が増えると、普段は魚のいない川でも魚が出てきます。
増水で 岩の裏側などに付く川虫や、土手の土が流されてミミズも出てきたり、その他の餌も多く流れてくるので格好の捕食タイミングなのです。

自然の怖さを知ろう

最近は水による災害が本当に多いですね。
次に過去の災害事例を見てみましょう。

  1. 平成11年6月23日から27日にかけて大量の雨が降り、地盤が緩んでいたところへ局地的に豪雨が 降ったことで、広島市や呉市の山沿いの地域では、29日、同時多発的に土砂災害が発生しました。
    死者は24人に上り、大惨事となりました。
  2. 平成11年8月14日、神奈川県の玄倉川(くろくらがわ)でキャンプをしていた客が濁流に流され、13人が犠牲になった事故がありました。
  3. 平成12年8月6日、群馬県の湯檜曽川(ゆびそがわ)で夏休みのスポーツ合宿の生徒を引率してきた指導者1名が増水した渓流の水に流され死亡しました。
  4. 平成29年年7月5日、福岡県と大分県を中心とする九州北部で6日にかけて集中豪雨が発生しました。
    被災地には大量の流木が見られ、河川に流れ込んだ総量はおよそ20万トン、36万立方メートルにのぼると推定されています。
    土砂崩れでなぎ倒された杉などの木が川を流れ下り、川の流れをせき止めて氾濫させ、住宅地に押し寄せた流木によって、水流だけの場合よりも破壊力が増し、家屋に大きな被害をもたらしたのです。

鉄砲水の語源は、江戸時代に材木を運搬するために川を堰き止めて、材木を浮かべ、その後に堰を切って下流に材木を流すのを「鉄砲流し」と呼んだそうです。
これが鉄砲水という気象・災害の用語になっています。
山地が多い日本では河川は急流であることが多く、しかも集中豪雨に見舞われることがあるので鉄砲水が発生しやすいのです。

上記の事故のうち、②と③は鉄砲水が原因です。

社長
鉄砲水は渓流釣りだけでなく、キャンプ時にも十分注意をしなければならないことがよくわかります。
被災中のキャンプ客に消防や自衛隊など救援関係者が近づけず、天候不順と地形の関係から救援ヘリコプターも使えず、川幅いっぱいに流れる濁流になすすべがなかったといいます。

原因は降雨だけでなく、融雪水、保水力のない露岩した川底などで、滑り台に水を流したような状態になってしまいます。
上記の事例①と④は土石流が原因と考えられますが、鉄砲水と土石流の違いは何なのでしょうか?
「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(土砂災害防止法)では、鉄砲水は土石流の一種に区分されています。

鉄砲水と土石流のメカニズム

土石流は、集中豪雨によって不安定な土砂や崩積土が渓流に流れ込み、土砂と一体となって流下してくるものです。
筆者は未だにTVで報道された2017年の北九州の災害事故の様子が鮮明に記憶に残っています。
土石流が起こり始める過程に定説はないようですが、以下のような自然(河川)の営みのせいだと言われています。

「つまり、降雨の度に岩石、倒木、土砂、腐葉などが沢や渓流に止まり、この沢を堰き止めてしまうのです。
この繰り返しで堰き止められた場所は大きなダムと化し、土砂、流水をさらに上流に溜め込みます。
つまり自然が作ったダムの決壊が土石流となるわけです。
このような「天然ダムの決壊」による土石流は土砂、水以外に大きな岩石なども押し流しながら川を下ってくることは、皮が削り取られた多くの木が下流に押し流されていた様子からも想像できます。
土石流はその川幅が狭いほど大きな速力を持ち、周辺土石を巻き込みながら直進する性質を持ちます。」
参考: 平成13年1月13日(社)全国測量設計業協会連合会「全測連」

予防対策

個人レベルではどのような予防ができるでしょうか?
渓流釣りのベテランからのアドバイスをご紹介します。

  1. 川の上流にダムが有るか確認しましょう。
    ダムは一定の水量になると放水を始めるため、急激な増水が想定されます。
  2. 地元の釣具店、漁協、地元の店の人などに川の情報を聞きましょう。
    増水の危険度の見極める知識を得ましょう。
  3. 雨が降った翌日の濁流や増水の具合を見て、水量が増えず、減水傾向にあることを確認したうえで、釣りをはじめましょう。
  4. 天候の良い日に通い 渓相を知る事が大切です。

以上のポイントを徹底することで、歩くポイント・川を渡るポイントを知り、増水の状態も把握しやすくなり、危険を判断する力がつきます。

参考: 平成13年1月13日(社)全国測量設計業協会連合会「全測連」新年号

渓流キャンプの時は天気予報に注意し、特に雷情報には注意を怠らないでください。

やまひつじ
テントを張る場所なども、渓流に近すぎないか等入念にチェックしてくださいね。

水防に関する知恵

山間部の地元の方は防災の知恵を持ち、山の気候、地質、河川の情報を熟知している方が多いです。
例えば「雨が降った後は川には行かない」「鉄砲水の前には、細かい小枝が流され、水が少し濁る」「鉄砲水の前には湿った風が吹く」というのもあります。
狭小な沢を落ちるように下って来る土石流が起こす空気の移動を言っているのでしょう。

「増水・鉄砲水は予想外に突然やってくる」「水の色と温度をしっかりと感じ取ることが大切」「カフェオレ色に茶色く濁った水は釣果が上がりやすいが、上流でなにかあったことも表しているので注意が必要」等は増水の前兆でもあるので、上流から濁った水が流れてきたら、警戒してすぐに逃げられる準備をしてください。

まとめ

以上、鉄砲水と土石流のことについてご説明しました。
これから夏になり益々渓流釣りや渓流キャンプに惹かれますが、私たちのレベルでできることは、雨の後の川の中を歩いたり、河川敷地内にキャンプを張るなどは絶対してはいけないことが分かっていただけたと思います。
鉄砲水の予兆も載せましたので、是非参考にしてください。
上流の一見、清流の流れるきれいな川も、こういった危険があることを忘れてはなりません。

最近のアウトドアブームで筆者が感じることですが、自然の営みというと、私たちはどうしても、行楽、観光を中心にした考えをしがちです。
つまり、山の自然に対し清流、新緑、冷気、新雪、森林浴、高原、避暑というプラスイメージを持ち、これを期待してしまいます。

しかし、自然の営みとは、これらを私たちに与えてくれるだけではなく、有史以前から山腹崩壊、土石流、洪水、地滑り、雪崩、河床低下などの土砂災害、雪害など、私たちにとっての災害もまた、自然の営みの一つと言えます。
いまや自然の力を抑制するという西洋型自然観では太刀打ちできないほど自然は脅威であることは、誰もが知っています。

社長
アウトドアを楽しむ私たちの一人ひとりが自然への畏敬を強くもつことの大切さを痛感します。


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ABOUTこの記事をかいた人

Kazuki

佐藤和樹(Kazuki Sato) 株式会社UJackの代表取締役社長。現在26歳。 趣味はキャンプと車弄りと映画鑑賞。 本社は千葉県にあり、 キャンプ用品をメインに取り扱っている。 製品の設計や開発なども独自に手掛ける。 UJack(ユージャック)は universal jack(世界に浸透する)を意味し、 文字通り世界中の人々にユージャッカーになってもらうことが目標。 あなたのアウトドアライフにさらなる”喜び”を。 Twitter、インスタグラム、Youtubeなどでも活動中!