鹿問題に悩まされる里山の人たち、どうしてこうなったの? ―地域生態系としての里山

筆者は都会から里山に移住し、5年になります。
高台に住んでいるので、見渡す限りの山々や季節の恵みに感動し、感謝しながら暮らしています。
そして、日々、都会では考えられなかった、里山の人たちの価値観や暮らしぶりに驚きます。

美しい自然の中で暮らす里山の人たちの悩みにシカ問題があります。
対策として畑や住居の周りには鹿ネットをめぐらしていますが、それでも、シカは入り込み、シイタケを食べたり、木々を荒らしたりしています。
鹿だけでなくイノシシも出没します。

やまひつじ
生態系が崩れているのは明らかです。

ただ害獣の数を減らせばよいというものではなく、農林業の衰退、里山や奥山の変化と密接に関わる社会問題であり山問題であると筆者は考えます。

かつては林業で栄えた、この地域で今もなお暮らし続けている人たち(ほとんどが後期高齢者)は、この70年間の変化をどのような気持ちで見つめてきたのでしょうか? アウトドア人気で里山に出かけ、森林浴や山菜取りなどの恩恵にあずかる読者に知ってほしいこと、それが今回のテーマです。

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2021年3月5日

里山とは

人里近くにある、生活に結びついた山や森林。
薪(たきぎ)や山菜の採取などに利用される。
適度に人の手が入ることで生態系のつりあいがとれている地域を指し、山林に隣接する農地と集落を含めていうこともある。

   
出典 小学館

里山は人々の生活と密接にかかわっていて、その存在は大変重要です。
山菜、キノコ、木材などを生産します。
山は雨水を豊富に蓄え、それにより災害から人々を守ってきました。

ところが現在、里山は全国的にピンチに立たされているのです。
里山の森を手入れする人がとても少なくなったからです。
住民の高齢化、若者の流出、林業軽視の国の政策などがその原因です。

日本の里山は今どうなってるの?

災害の現状は皆さんもよくご存知でしょう。
「平成29年7月九州北部豪雨」を覚えておられますか。
赤谷川が氾濫し、流木と泥に埋もれた福岡県朝倉市の様子に私たちは声を失いました。
木皮が剥がされ、裸状態の流木の多さにも愕然としました。
山は人間を災害から守ってくれる存在ではなかったのか?なぜ??

里山は人の手が入った自然なので、里山の保全は、人の手を入れることによってしかなされ得ません。
しかし、昔の生活に単純に戻ることはできませんし、どのようにして、どのくらいの程度に、人の手が入るべきなのかについて、一般的答えがあるわけでもありません。

里山は地域生態系であり、それぞれに地域の特性があるのです。
個々の地域の特性を見ながら、里山的自然がどのような自然であったのか、あるのかを、調査する必要があります。
そしてそれぞれの地域の人々を中心として、私たちがどのような自然を望むのかを話し合わなければ、解決は難しいと思います。

里山はエネルギー革命と農業革命によって放棄されてきました。
さらに過疎化・高齢化によって休耕田が拡大しています。

社長
手入れがなされない棚田が土壌崩壊の危険をかかえています。

また中山間地域の里山のほとんどが獣害で苦しめられています。
食料の自給率が 40 パーセントに満たない日本農業の状況、木材の自給率が 20 パーセントほどしかない日本林業の実態、しかも現在豊かな緑の山々も、充分な手入れができていない「森林大国」日本の森林状況は惨憺たるものがあります。

私たちの生活スタイルや、経済成長至上主義の路線を進む政治経済政策の見直しが急務です。

鹿ってどんな動物?

シカは体が大きく、食料としてたくさんの植物を必要とします。
植物を常に食べているか、口の中で食べたものを反芻している大食家です。
双子葉植物は栄養が高く消化も良いので、好物です。
ササは初夏を除けば葉が固いので、量を確保するために食べます。
飢えた状態では樹皮までも食べ、結果、若木も育たなくなるのです。

急激に増えたのは1990年代からだといいます。
それにつれて、各地で食害による被害が深刻化し、農林業への影響はもちろん、森林においても増えすぎたシカによって多くの植物が食べられて消えていっています。
むき出しになった土壌は流され、土地は痩せていきます。
多摩地区での高橋氏の調査によると、柵によって仕切られた鹿の生息区域の外側と内側では土壌流出の速度が70倍近く違ったといいます。

日光では鹿たちによって湿原が掘り返され、ヒョウモンチョウやイチモンジチョウなどがみられなくなったり、ウグイスなどの鳥も減りました。

高山地帯にも鹿は進出して、自然体系が崩れています。
以前はあまり鹿がみられなかった地域においても、鹿による被害が報告されるようになりました。

どうして鹿がこんなに増えたの?

全国的な統計で農業被害面積を見ると、鹿はイノシシを大きく引き離して最も大きな 被害を与えています。
なんと被害面積は4万~6万ヘクタールとも言われています。
(参考:『シカ問題を考える』)

1980年代後半から鹿の被害が急増した原因を高槻成紀氏は、「日本各地の山村で人が減り、残った人々も高齢化していることが関係している」と指摘します。

私は過去20年のシカ急増の背景について考える中で、森林 伐採、 オオカミ の絶滅、ハンターの減少、温暖化などの要因を検討したが、どれも説明が難しかった。
そうした中で、もっとも説明しやすいのは 農山村の人口減少にあることに気づいた。

中略

農村地域での人口減少と高齢化は、警戒心の強いシカが、元々人間が管理していた地域に生活圏を広げることにつながっている。
過疎化によって密猟を含めたハンターの数が減っていることとも関係があるようだ。
シカの増加を抑制してきた農村社会という抑制要因が消滅しつつあることと入れ替わるように増えたシカは、さらにあぶれて高山や湿原地帯にも進出して被害は拡大する。

高橋氏はいろいろな要因(オオカミが絶滅したこと、森林が伐採されたこと、地球の温暖化など)を精査しましたが、どれも納得いかなかったといいます。
狼が絶滅したのは100年前であり、森林伐採が盛んにおこなわれた時期とも30年くらいずれている、雪が元々降らない西日本でもシカは増えているため、地球温暖化説でもうまく説明できなかったのです。

ほとんどの都市住民には山奥でおきていることの深刻さを正しく理解するのは難しいでしょう。

社長
自然とは、せいぜい、休日に訪れて楽しむリゾート感覚の場所になっているというようにも思います。

おわりに

以上、鹿に悩まされている里山の現状をお伝えしてきました。
住民は柵を作ったりして防御いますが、広い地域を隙間なく囲うのは費用的にも大変な負担になっています。

読者の皆さんもキャンプや森林浴で里山や奥山に入られる時には、道に飛び出してくる鹿にご注意ください。

社長
車のダメージはもちろんのこと、大事故につながる場合もあります。

日没後や夜明け前後は特に霧が発生しやすく、視界が悪い中、車の出現に驚いたシカが道路に飛び出し、車と衝突する事故は多く発生しています。

また、ドライバーも眼前にいきなりシカが出現し、避けようと急ハンドルを切り、ガードレールに衝突したり道路をはみ出したりするケースもあります。

この記事が人間と自然との共存という関係が失われ、正しく自然と向き合う方法を忘れつつある日本の憂うるべき現状を考えるきっかけになれば、筆者として大変うれしく思います。

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Kazuki

佐藤和樹(Kazuki Sato) 株式会社UJackの代表取締役社長。現在26歳。 趣味はキャンプと車弄りと映画鑑賞。 本社は千葉県にあり、 キャンプ用品をメインに取り扱っている。 製品の設計や開発なども独自に手掛ける。 UJack(ユージャック)は universal jack(世界に浸透する)を意味し、 文字通り世界中の人々にユージャッカーになってもらうことが目標。 あなたのアウトドアライフにさらなる”喜び”を。 Twitter、インスタグラム、Youtubeなどでも活動中!