英国ナショナル・トラストって?イギリス人のアウトドアスタイルを知ろう!

ナショナル・トラスト活動とは、自然環境を守る一つの市民運動・住民運動で、かけがえのない地球環境を無計画で無謀な開発などから守り、自然や歴史的建造物などを後世に残していこうとする活動です。
ここではイギリス発祥のナショナル・トラストの精神を知り、イギリス人が週末に楽しむアウトドアのスタイルについてお伝えします。

ナショナル・トラストって?

英国ナショナル・トラストはThe National Trust For Places of Historic Interest or Natural Beauty in England, Wales and Northern Irelandからきています。

やまひつじ
「イングランド、ウェールズおよび北アイルランドの歴史的名勝と自然景勝地のためのナショナル・トラスト」という意味です。
以後、ザ・ナショナル・トラストで統一します。

美しい自然や歴史ある建築物などを保護したり、管理・一般公開をしています。
そんなザ・ナショナル・トラストと同じような活動をしている組織や活動が、「ナショナル・トラスト」と広く呼ばれ世界中にあります。
日本での取り組みは次記事でお伝えしましょう。

ザ・ナショナル・トラストについて

19世紀のイギリスは産業革命に伴って都市が拡大していき、自然環境や歴史的建造物の破壊が危機にさらされていました。
1895年、市民の憩いのためのオープンスペースを将来の人々のために残していきたいという願いを持つ3人の市民によってザ・ナショナル・トラストは生まれました。
ローマ時代の遺跡・教会・修道院・古城・歴史的邸宅・公園・庭園・森林・沼沢地・湖・農地・牧場・運河・水車小屋・納屋・草原・荒地など、すべての保全と管理を行っています。
政府は税関係など法律面を整備し、間接的にこの運動を補佐しています。

「自分たち国民のために、国民自身の手で、大切な自然環境という資産を買い取ったり、寄付したりすることによって、守っていく」
これが、ザ・ナショナル・トラストの基本理念です。
現在、420万人の会員と7万人のボランティアが支える英国最大の自然保護団体となっています。

現在では、ザ・ナショナル・トラストは美しい田園地帯や自然海岸線(1,140km)、350ヵ所以上の歴史的建造物や庭園・遺跡などの土地を保有・公開しています。
総面積は25万5000ヘクタール(東京都とほぼ同じ面積)といいますから、驚きますね。
プロパティーの取得や維持管理のための資金は、すべて寄付や会員からの会費によりまかなわれています。

組織の運営は寄付金や会費、そして個人ボランティアに頼っていると言いましたが、なんと現在のザ・ナショナル・トラストの会員数は全英420万人で、入場料を払ってナショナル・トラストの所有地を訪れた人(筆者もその一人)は年間1900万人にも上ります。
会員は料金を払わずにその所有地に入ることができますので、全入場者数は計り知れないほど多いですね。

ボランティアの存在はナショナル・トラストに欠かせないほど重要です。
若い人からお年寄りまで、その数は現在6万人以上で、年間3億1000万時間のボランティア労働がなされていると言います。

社長
ちなみに、スタッフで常勤の人ははわずか1600人しかいないそうです。

ザ・ナショナル・トラストができるきっかけ

英国は18世紀後半から19世紀前半にかけて産業革命のあおりで大変混乱していました。
そういう中、人々の生活を一変させる大事態が起こったのです。
都市部の人口が増えたため、穀物の需要が急激に高まり、農業改革が起こり、開発のためにどんどん森が破壊され、結果、失われた農地や森は約20万ヘクタールに達したといわれています。

さらに湖水地方には鉄道乗り入れの計画も持ち上がり、開発の波に呑まれようとしました。
自然とふれあうことのできる共有地が開発のためにどんどん失われていく事態は都市部の人々に深刻な危機感を募らせる結果となり、開発阻止の声が高まっていきました。

ついに1895年、3人の市民が立ち上がり、民間団体、ザ・ナショナル・トラストを設立しました。
ロバート・ハンター(弁護士)、オクタビア・ヒル(実業家)、そして湖水地方に暮らすハードウィック・ローンスリー(イギリス国教会の牧師)です。

近代的な都会暮らしをする英国人の典型的な週末の過ごし方

英国は自然がとても美しい国ですよね。
美しい景観を保全する努力をしてきた結果、あの美しさが保たれているのですね。
英国人は週末はどんな過ごし方をしているのでしょうか?
喧騒の都会の雑踏を離れ、田舎に出かけ、自然の中で鳥の声を聞きながらハイキングをしたり、サイクリングをしたり、魚釣りをしたり、乗馬などをして、自然に親しんでいます。
園芸に興味を持つ人たちはカントリーガーデンやコテッジガーデンを自宅前に作り、野にあるように花を咲かせて楽しんでいます。

首都ロンドンから1~2時間以内でバスでも列車でも、もちろん車でも田舎に着けてしまいます。
筆者の知人がイギリス、コッツウォルズを訪れた時、泊まったところはBritish Airの元パイロットとキャビンアテンダントが営む素敵なB&Bだったそうです。
現役時代、二人は週末ごとにここへきて宿泊施設にする準備をしたそうです。
次に英国ナショナル・トラストが守ってきた美しい名所、湖水地方をご紹介します。

湖水地方

イングランドの北西端に位置する湖水地方は、1951年にそのほとんどの部分が国立公園に指定されました。
大小無数の湖が点在し、標高1000メートルの山々が連なり、緑の丘では羊が草を食む優しい風景が広がっています。

イギリスの代表的なロマン派詩人であるウィリアム・ワーズワース(1770~1850年)は、10代で両親を失い孤独な少年時代を送りますが、湖水地方の自然の美しさが彼の心の慰めとなりました。
そして、自然讃美の詩を多く書きました。

また、ピーターラビットで有名な絵本作家のビアトリクス・ポター(1866~1943年)も湖水地方出身です。
彼女は、湖水地方の美しい風景を守るために1,700haを超える土地を自費で購入し、それをザ・ナショナル・トラストに寄贈し、その維持管理を一任したそうです。

まとめ

この記事ではザ・ナショナル・トラストの始まりから現在までの様子をお伝えしてきました。
自然環境保護運動の先駆けであるザ・ナショナル・トラストは100年以上にもわたって、大きな影響と、環境破壊が著しい現在への光・指針を与えてくれています。

筆者は知人からイギリス南部のケント州にあるシシングハースト城を訪れた話を聞いたことがあります。
そこはザ・ナショナル・トラストの一つです。
シシングハースト城はホワイトガーデンで有名なのですが、一人の英国人おばあさんがボランティアで庭の手入れを手伝っていたそうです。
「ああ、こんな老後の過ごし方もあるんだな」と、とても感銘を受けたと知人は話してくれました。
イギリスの風景がなぜあんなにも美しいのか、その美しさの背景には、ザ・ナショナル・トラストを支える多くの人の存在があるのですね。

今、こうして英国ナショナル・トラストの歴史をひもとくと、イギリス人の生き方そのものが見えてきます。

社長
アウトドアブームに沸く日本のスタイルとは少しちがう自然との接し方について、読者の皆さんはどう思いましたか?

参考文献:
四元 忠博 『ナショナル・トラスト100周年への道筋』 時潮社, 2018
木原啓吉『ナショナル・トラスト―自然と歴史的環境を守る住民運動、ナショナル・トラストのすべて』三省堂, 1998
小野まり 『図説 英国湖水地方 ナショナル・トラストの聖地を訪ねる』 河出書房新社, 2010
横川 節子『イギリス ナショナル・トラストを旅する』千早書房, 2001

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Kazuki

佐藤和樹(Kazuki Sato) 株式会社UJackの代表取締役社長。現在26歳。 趣味はキャンプと車弄りと映画鑑賞。 本社は千葉県にあり、 キャンプ用品をメインに取り扱っている。 製品の設計や開発なども独自に手掛ける。 UJack(ユージャック)は universal jack(世界に浸透する)を意味し、 文字通り世界中の人々にユージャッカーになってもらうことが目標。 あなたのアウトドアライフにさらなる”喜び”を。 Twitter、インスタグラム、Youtubeなどでも活動中!